『病気を遠ざける!1日1回日光浴 -日本人は知らないビタミンDの実力-』という本を読みました。
著者の斎藤糧三さんは機能性医学(最先端科学と医学を融合した、生活習慣病や慢性病の治療法)をアメリカから日本に紹介した医師です。
健康と食事に気を配るファスティング・マイスターの私は、以前からビタミンDの効能についても多少知ってはいましたが、本書を読んで知識を深めることができました。
今回は、自分用のメモを兼ねて、この本の内容を紹介します。
ビタミンDの欠乏が多くの疾患に関連している
ビタミンDは体内へのカルシウムとリンの吸収を促進する機能があり、骨を強くするためには欠かせない栄養素として知られています。
しかし、近年、ビタミンDの効能はもっと広大であることが解明されてきました。
本書によると、ビタミンD欠乏が関連していると考えられる疾患には次のようなものがあります。
- がん(大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がんなど、皮膚がん以外のほとんどのがん)
- 動脈硬化性疾患(心臓病、脳卒中など)
- 認知症(アルツハイマー型認知症など)
- 高血圧
- 2型糖尿病
- アレルギー疾患(花粉症、アトピー性皮膚炎、遅延性フードアレルギーなど)
- 自己免疫疾患(関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、1型糖尿病など)
- 感染症(かぜ、インフルエンザなど)
- 精神障害(うつ病、季節性うつ、自閉症、統合失調症など)
本書の第二章、第三章では、これらの疾患にビタミンDがどのように関わっているか、ビタミンDを補充することでどのようなメリットが得られるかについて、医学論文などのエビデンスを引用しながら、詳しく述べられています。
両章はやや専門的な内容ですが、簡単に言うと「ビタミンDは細胞に備わったアンテナのような受容体に結合して、その機能を発揮する(遺伝情報を調整する)」そうです。
そのビタミンDの受容体が骨代謝とは関わりのない多数の組織(例えば、膵臓、心臓などの細胞、神経細胞、免疫細胞など)で発見されていることが、ビタミンDの多機能性を物語っています。
一例として糖尿病とビタミンDの関連を書き出すと、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞にある受容体にビタミンDが結合すると、インスリンが分泌されやすくなる(つまり、ビタミンDは糖尿病の予防や糖尿病患者の合併症を抑える可能性がある)ようです。
ネットでビタミンDについて調べると、骨に関することしか書いていないページもありますが、ビタミンDの多機能性について書かれたページも多々見つかります。ご興味あれば、調べてみてください。
紫外線を浴びると皮下でビタミンDが合成される(日光浴のススメ)
現代では、紫外線が皮膚の老化(シミ、シワ)を進めることや、皮膚がんの原因になると考えられていることから、日焼け止めクリームなどで日光を過度に避ける傾向があります。その結果、多くの現代人はビタミンDが欠乏しています。
しかし、紫外線を浴びると皮下でビタミンDが合成されるので、適度に日光浴をすることがビタミンDを得るための有効な方法になります。
紫外線(UV)には波長の長い順にUVA、UVB、UVCの3種類あります。このうちUVCが人体にはもっとも有害ですが、空気中の酸素とオゾン層で完全に吸収されるため地表には届きません。
UVAとUVBのうち、ビタミンDを作る働きがあるのはUVBで、多くは大気層で吸収されますが、一部は地表に降り注いでいます。ただし、UVBはガラスを通過できないので、皮下でビタミンDを作るには屋外でUVBを浴びる必要があります。
日光がもっとも強い時間帯は10時~14時で、場所や季節や天候にもよりますが、1日20分程度を目安に日光を浴びると効率よくビタミンDを作ることができます。
同じUVB量を浴びる場合、皮膚を日光にさらす露出面積が広くなるほど、日光への暴露時間が長くなるほど、皮下で生成されるビタミンDの量は増えます。日焼け止めを塗った部分ではビタミンDが生成されません。
ビタミンDの生成には個人差があります。個人差に影響を与えるのは次の3つです。
- 皮膚の色(日焼けし過ぎの人や黒人などはビタミンDが作られにくい)
- 体脂肪量(太り過ぎは血中ビタミンD濃度の上昇が起こりにくい)
- 年齢(60歳あたりから日光浴の合成が難しくなる)
なお、本書では、特に冬季や計画的な日光浴ができない場合、日焼けではなくビタミンDの生成を目的に、日焼けサロンなどのタンニング(日焼け)マシンを活用することも勧めています(ただし、体質などによりタンニングマシンを利用できない人もいるのでご注意ください)。
高緯度で日照量が絶対的に不足している北欧では、UVBの出るタンニングマシンが「サンベッド」と呼ばれて広く普及しているそうです。
紫外線は白内障の原因になり得るため、紫外線を浴びる際は、サングラスなどで目を紫外線の害から守ることを忘れないようにしてください。
人体に及ぼす影響という観点から紫外線の強さを指数化したものをUVインデックスといい、気象庁のウェブサイトで全国のUVインデックスの予測分布図を確認することができるので、リンクをはっておきます。
オムロンヘルスケアのウェブサイトで連載されている健康コラムvol.154「紫外線の功罪」というページも紫外線や日光浴について参考になります。
ビタミンDの食事摂取基準
ビタミンDの食事摂取基準を以下に示します。
国際的に見て、日本の摂取基準は低く、例えばアメリカの数値(推奨量)と比べると3分の1程度となっています。これは日本がビタミンDの働きをカルシウム代謝と骨代謝のみに限定しているからです。
【日本/2015年】ビタミンDの食事摂取基準
区分 | 目安量 | 耐容上限量 |
成人(男女) | 5.5μg/日 (220 IU/日) | 100μg/日 (4,000 IU/日) |
【米国/2011年】ビタミンDの食事摂取基準
区分 | 推奨量 | 耐容上限量 | 無毒性量 |
成人(男女) | 600 IU/日 | 4,000 IU/日 | 10,000 IU/日 |
老人(70歳以上) | 800 IU/日 | 4,000 IU/日 | 10,000 IU/日 |
本書ではビタミンDの血中濃度を最適化し、現代人が悩む慢性的な疾患の予防と改善を果たすために、成人には、耐容上限量の、100μg/日(4,000 IU/日)の皮下での合成と摂取を勧めています。
ビタミンDを含む食品
ビタミンDには6種類あります。人にとって重要なのは、植物由来のビタミンD2と動物由来のビタミンD3で、特にビタミンD3が重要です。
ビタミンDは限られた食品にしか含まれておらず、ビタミンD2を含むきのこ類、ビタミンD3を含む魚類以外では、卵黄くらいです。
野菜、果物、穀類、豆類、肉類、海藻類などにはほぼ含まれていません。
ビタミンDの含有量が多い食品を以下に示します(本書の150~151ページから抜粋)。含有量はいずれも可食部100g当たりの数値です。
食品(きのこ類) | 含有量(ビタミンD2) |
キクラゲ(乾) | 85.4μg |
椎茸(乾) | 12.7μg |
椎茸(生) | 0.4μg |
舞茸 | 4.9μg |
エリンギ | 1.2μg |
きのこ類だとキクラゲ(乾)が圧倒的に多く含んでいます。
魚類だとアン肝が圧倒的ですが、シラス以下の魚類も総じて含有量が多いです。
きのこ類でも魚類でも生より乾燥させたものの方が含有量が多いです。やはり紫外線がビタミンDを生成しているのでしょう。
魚だとたんぱく質、種類によってはEPAやDHAなどオメガ3脂肪酸も同時に摂ることができます。
食品(魚類) | 含有量(ビタミンD3) |
アン肝 | 110.0μg |
シラス干し(半乾燥品) | 61.0μg |
シラス干し(微乾燥品) | 46.0μg |
マイワシ(みりん干し) | 53.0μg |
マイワシ(生) | 32.0μg |
イクラ | 44.0μg |
鮭(白鮭、秋鮭) | 32.0μg |
ニシン | 22.0μg |
ウナギ(蒲焼き) | 19.0μg |
ブリ | 8.0μg |
ビタミンDは脂溶性なので、脂質を含む魚類から摂取したほうが吸収されやすいです。きのこ類の場合は、炒め物や揚げ物など、油を使った料理にすると吸収率が上がります。
ビタミンDをサプリメントで補充する
本書では、ビタミンDをサプリメントで補充することも提言しています。
ただし、大量に摂る場合は、ビタミンAもサプリメントなどからバランス良く摂るべきです。それは細胞核でビタミンAとビタミンDを受け取る受容体が共有されていて、ビタミンDばかりを摂るとビタミンAが認識されにくくなるからです。
著者の斎藤糧三さんが代表取締役を務める日本機能性医学研究所からはビタミンDのサプリメントが発売されています。
楽天やAmazonなどのランキングの中から添加物が少ないビタミンDサプリメントをいくつか見つけたので、併せて紹介しておきます。
メーカー(製品名) | 原材料 | 形状 |
日本機能性医学研究所 (VD1000) | 澱粉、HPMC、ビタミンD3 | カプセル |
大塚製薬 (ネイチャーメイド) | 乳糖、セルロース、ショ糖脂肪酸エステル、ビタミンD | 粒 |
ナウフーズ (ビタミンD-3) | エクストラバージンオリーブオイル、 ソフトジェルカプセル(ゼラチン、水、グリセリン) 、 ビタミンD3 | カプセル |
森下仁丹 (BabyD) | 食用油脂(ヤシ油、パーム油)、ビタミンD3 | 液体 |
森下仁丹のBabyDという商品は液体なので食べ物や飲み物に数滴混ぜるという使い方ができます。ただし、赤ちゃん向けなのでビタミンDの含有量は他の3種類と比べてかなり少ないです。
ナウフーズにも液体タイプがあります。こちらはココナッツ・パーム核オイル由来のMCTオイル(中鎖脂肪酸)にビタミンDを溶かしています。MCTオイルというのがポイント高いです。
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